なぜ施術では「理論」よりも「身体の声を聴くこと」が大切なのか
アレクサンダー・テクニークの創始者、F.M.アレクサンダーの思想には、次のような趣旨の考え方があります。
「まず観察し、不思議に思うこと。実践を重ねたあとに、理論を組み立てなさい」
これは単なる学習方法ではなく、「人の身体とどのように向き合うか」という本質を表した言葉のように思います。
症状名だけでは分からないことがあります
肩こり、腰痛、頭痛など、同じ症状であっても、その原因や身体の反応は一人ひとり異なります。
そのため、施術者が最初から理論を当てはめようとすると、
- この症状なら、この筋肉が原因
- この姿勢なら、ここを施術する
- この反応なら、この方法を使う
といったように、身体を決まった型に分類してしまいがちです。
もちろん、医学的な知識や理論は大切です。
しかし、理論だけを頼りに身体を見てしまうと、「目の前にいるその人」にしか現れていない小さな変化を見落とすことがあります。
まず身体を観察する
当院では、最初から答えを決めつけるのではなく、まず身体の反応を丁寧に観察することを大切にしています。
「なぜ、ここで動きが止まるのだろう」
「なぜ、この方向だけ動かしにくいのだろう」
「なぜ、ここに触れると身体の力が抜けるのだろう」
このような疑問を持ちながら、動きや呼吸、筋肉の緊張、触れたときの反応などを確認していきます。
すぐに答えを決めず、身体の変化を丁寧に追っていくと、それまで気づかなかった情報が少しずつ見えてくることがあります。
これが、私の考える「身体の声を聴く」という姿勢です。
理論が先にあると、見えるものが変わってしまう
人は一度「原因はここだ」と考えると、その考えに合う反応を無意識に探してしまうことがあります。
すると、本来は別のところに表れていた大切な変化まで、最初に立てた理論に合わせて解釈してしまうかもしれません。
一方、先入観をできるだけ持たずに観察すると、まだ名前のついていない反応や、その人特有の身体のつながりを受け取りやすくなります。
身体は、いつも教科書どおりに反応するとは限りません。
だからこそ、理論に身体を合わせるのではなく、目の前の身体から学ぶことが大切なのです。
理論は必要ないのではありません
これは、理論や医学的知識を否定するという話ではありません。
理論は、身体の状態を整理し、施術の安全性や再現性を高めるために欠かせないものです。
ただし、理論は目の前の患者さんを決めつけるために使うのではなく、観察したことを整理し、より深く理解するために使うものだと考えています。
十分に観察し、実践を重ねるなかで生まれた考え方は、例外的な反応にも対応しやすく、実際の施術にも生かしやすくなります。
「不思議だ」と感じることを大切に
当院の施術で用いる、古武術や合気の考え方を応用した触れ方も、力で身体を動かすものではありません。
そっと触れたときに起こる、
- 身体の力が自然に抜ける
- 呼吸が深くなる
- 身体を預けたくなる
- 動きにくかった方向へ動きやすくなる
といった反応を観察しながら施術を進めていきます。
こうした変化は、理論だけで作り出せるものではありません。
実際に触れ、感じ、患者さんの身体がどのように応えているのかを観察するなかで、初めて見えてくるものです。
一人ひとりの身体に合わせた施術を
まず観る。
触れる。
感じる。
そして、「なぜだろう」と不思議に思う。
この順番を大切にすることは、単なる施術技術の問題ではありません。
患者さんを症状名や決まった型だけで判断せず、一人の人間として丁寧に向き合うための姿勢でもあります。
身体は、その日によっても変化します。
以前は合っていた方法が、今日は合わないこともあります。そのため施術も、決まった手順を繰り返すだけでは十分ではありません。
理論を大切にしながらも、理論に縛られない。
目の前の身体が示す小さな変化を受け取りながら、その方に必要な施術を組み立てていく。
和田はり灸院では、そのような「身体との対話」を大切にしています。





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